富士駐屯地、開発実験団・装備実験隊と長射程ミサイル

2025年8月末、防衛省は長射程ミサイルの全国配備を通知し、陸上自衛隊富士駐屯地には2025年度末までに高速滑空弾、27年度末までに12式長射程ミサイルを配備するとした。熊本の健軍駐屯地にも25年度末までに12式長射程ミサイルを配備、さらに百里、横須賀に12式、上富良野、えびのなどに高速滑空弾を配備するとした。

2026年3月7日夜、富士駐屯地から12式長射程ミサイルの発射車両と指揮車両などが配備先の熊本県の健軍駐屯地に移動した。3月8日には横須賀からフェリーで新門司港に運ばれ、高速道路経由で、9日の零時過ぎに健軍駐屯地に到着した。健軍の正門から入った車両はオトリの車両とみられ、ミサイル関係の車両4台は裏門から搬入された。自衛隊は搬入ルートを事前に警察に連絡し、搬入時には駐屯地内に待機していた警察が阻止線を張った。

防衛省からこの移動情報がNHKに流されたとみられ、NHKは7日の夜のニュースで富士からの出発の状況を放映した。これまで防衛省は配備に関して事前に通知するとしていたにもかかわらず、熊本の県や市の行政には何の通知もしなかった。その後、防衛省は車両を搬入後、整備し、31日にミサイル配備と通知した。防衛省は事前に通知するといいつつ、ミサイル車両の搬入とミサイルの配備とは違うなどと詭弁を弄した。

富士駐屯地には富士学校があり、その下の富士教導団に特科教導隊(155ミリ榴弾砲や12式ミサイルなどの射撃中隊で構成)がある。長射程ミサイルはその特科教導隊の射撃中隊に配備されることになるが、今回の報道では、富士駐屯地の開発実験部隊から健軍に搬出したという。富士駐屯地には、富士教導団のほかに教育訓練研究本部(東京・目黒)下の開発実験団がおかれて、そこには開発実験団本部と装備実験隊がある。この装備実験隊には実験科があり、そこで車両、ロケット、誘導武器、通信、指揮統制装置などの実験・研究をしている。アメリカや新島などの訓練場での実験もしているとみられる。

 

この開発実験団で12式長射程ミサイルの実験と装備がなされ、健軍に送られたのである。すでに2025年6月の富士火力総合演習では、高速滑空弾と12式長射程ミサイルの発射車両が展示された。同年5月頃、大分の湯布院で装備実験隊の12式長射程ミサイル車両(ナンバーは「装実」の発車車両990378、990379、指揮車両990380)の移動が確認されている。今回、富士から搬入された発射車両のナンバーで990378、990379が確認されていることから、装備実験隊は九州への移動の訓練を行なっていたとみられる。 

今後もこの部隊で長射程ミサイルの実験・装備がなされて、全国に運ばれていくだろう。また、富士駐屯地の特科教導隊に長射程ミサイルが配備された後は、ここで教育を受けて人員が各地に派遣されていくことになる。富士は長射程ミサイル部隊の増殖の場となる。

高速滑空弾については防衛装備庁の高速滑空弾開発室による「島嶼防衛用高速滑空弾(早期装備型)はどこまで進捗したのか」という報告がある(防衛装備庁技術シンポジウム、2025年11月、公開ファイル)。この報告では2025年8月までに第2次発射試験(最終試験)を行い、国内でも運用に向けての試験を行ったとある。この試験には富士の開発実験団も参加している。防衛装備庁には、陸上装備研究所があり、その中に弾道技術研究部もある。防衛装備庁の高速滑空弾開発室は三菱重工の小牧北製作所(ミサイル製造)や富士の開発実験団と開発、製造、実験を協働し、高速滑空弾の配備の準備をすすめてきたのだろう。当然、人員の交流もある。

12式長射程ミサイルや高速滑空弾はこの開発実験団で実験・装備がなされ、富士の特科教導隊に移管されることになる。12式や高速滑空弾の発射車両、指揮車両などは富士に持ち込まれ、ミサイルの搬入も徐々に進められ、高速滑空弾部隊については3月31日をもって配備の完結、26年度の特科教導隊の新しい射撃中隊の編成ということだろう。

健軍、富士を端緒に、長射程ミサイルの全国配備がおこなわれていくことになるが、市民や自治体には十分な説明はない。軍拡が市民に説明もなく、警察の権力を利用し、偽装車両も使いながら、搬入がすすんでいる。それは主権者の知る権利を無視し、騙して搬入するという手口である。長射程ミサイルは先制攻撃に使用される。その配備は加害と被害の場へと地域を変えていく。それは主権者の権利の侵害であり、平和的生存権の侵害である。また、武力の威嚇と行使、交戦権を否認した憲法の平和主義に反する。その配備は自衛の範囲を逸脱し、平和共存をも破壊する。さらに長射程ミサイルは日米の軍事同盟の下、無法な戦争をすすめるアメリカの指揮権の下で使用される。市民の力でこのような動きを止めていくしかない。     (T)