2009年7月26日13時30分から
ブルースギャグノン講演会
愛知県・名古屋YWCA 主催パトリオットミサイル配備に反対する東海交流会
ブルース・ギャグノン講演会・名古屋
写真提供・不戦ネット2009年7月26日 名古屋YWCAでブルース・ギャグノン氏の講演会がもたれた。参加者は30名ほど。ギャグノンさんはアメリカの宇宙の支配そして軍事化について話した。
アメリカは他の国より軍事的優位を保つため、宇宙を支配し、他の国には宇宙に手を出させない工作をしている。宇宙軍拡には大変なお金がかかり、アメリカ一国だけでは無理なのでペンタゴンは同志を探している。日本、韓国、イギリス、ドイツ、インド等に声をかけている。日本の宇宙計画は平和利用であったが、2004,2006年と経団連は圧力をかけ平和利用という文言を取り除かせた。日本は、これからはアメリカのパートナーとして研究に協力していくことになる。
また、月には核融合に使用するヘリウムを初め多くの資源がある。アメリカは1979年、国連が推進した月面条約(どの国、個人、企業も月の資源を独占できない。どの国も月に基地を作らない。)に署名していない。1952年からアメリカは月に基地を作る計画を持っている。
今、アメリカの標的は中国である。中国包囲のためのMDシステムであり、駆逐艦のイージス対応がある。宇宙司令部では5年間アメリカー中国戦争のシミュレーションが行われている。アメリカの宇宙からの先制攻撃に対し、中国の反撃があり、それをMDでつぶす。そのような構想を練っている。しかし、中国のミサイルはアメリカの西海岸までしか届かない。
今、世界は気候変動で大変な時期にさしかかっている。軍拡に多くの税金を使っている場合ではない。我々市民は軍産共同体を地球グリーン産業に変えていかなければならない。核を廃絶し、MDシステム、軍産複合体の変更を迫っていくことが、今、私達がしなければいけないことだ、と結んだ。
(池)
ブルースギャグノン講演会のまとめ
こんにちは、ブルースギャグノンです。皆さんとお会いできとてもうれしいです。
●アメリカの宇宙戦争計画
1982年6月12日の出来事からおはなします。その日はニューヨークに世界から多くの人々が集まり、核兵器に抗議した日です。わたしはフロリダでその様子をテレビで見たのですが、その集会のあとで共和党大会が映され、レーガン政権での戦略本部長であるグラハム将軍が、われわれは宇宙での計画をもっている、核廃絶の運動はやりたいようにやらせておけという意味の発言をしていました。わたしは、さていったいこの宇宙計画では何がおこなわれようとしているのかと調べ始めたのです。
当時、わたしはケネディ宇宙センターの近くに住んでいましたので、米国のグローバルな宇宙戦争計画(スターウォーズ)に反対し、地域で集会を計画し、ロケットの打ち上げやプルトニウムを搭載しての飛行に抗議してきました。そして世界各地のスターウォーズに反対する人たちを組織化し、1992年に「宇宙への兵器と原子力の配備に反対するグローバル・ネットワーク」を結成し、いまではこのネットには世界各地の約150組織が参加しています。
アメリカの宇宙戦争計画には世界中に基地が必要になります。多くがレーダー基地ですが、それは軍事衛星との通信のために必要です。1997年にアメリカの宇宙司令部が発表した2022年のヴィジョンでは地球が玩具のように扱われています。現代の戦争は、コンピューター情報技術を利用し宇宙からの情報によって地上の戦争をおこなうというものです。たとえば、2003年のイラク戦争(衝撃と畏怖作戦)では70パーセントの攻撃が宇宙からの指令によるものでした。アメリカの陸軍・海軍・空軍など軍隊のそれぞれが宇宙司令部を持っています。
アメリカは他の国も宇宙技術を開発し戦争の利用するようになることを予測し、アメリカの優位のためにそれを阻止しようというのです。コロラド州の宇宙司令部の本部には宇宙の支配者を示すロゴがあります。そのために宇宙制覇が狙われます。連邦議会では宇宙の軍事力について調査報告を出しています。将来、航空宇宙産業では月や火星に行って資源を採掘するというのです。宇宙支配のために、宇宙に出入りする軍事的な道を作り、他の国に出入りさせないことを考えています。
なぜアメリカを含めて他の国が月にこれほどまでの興味を持つのでしょうか。月にはヘリウム3という資源があり、その物質は核融合に使えます。自己のものにすれば石油よりも大きな富になります。1979年に国連は月の資源についての多国間の衝突を心配し、どの国も月の資源を独り占めできないという、月についての条約を作成していますが、アメリカはこの条約に署名していません。アメリカには月に軍事基地をつくる計画があるからです。
アメリカは宇宙司令部による全方位・全領域での制覇と地球の支配をおこなっています。しかし、このような宇宙制覇は軍拡競争をすすめ、地上をもっと混乱させることになります。宇宙の軍拡競争には多額の経費がかかります。一国だけでは全方位・全領域支配はできません。ペンタゴンは日本・韓国・英国・ドイツなどを仲間にし、宇宙軍拡競争をおこなうのです。日本はこの宇宙軍拡競争に参加し、5月に宇宙基本計画を発表していますが、2010~14年までに2兆5千億円という多額の予算を計上しています。当初、日本の宇宙計画は平和的なものでしたが、日本の経団連は圧力をかけて平和利用を取り除き、このような宇宙戦争技術の開発をすすめることになり、アメリカのパートナーとなったのです。
●「ミサイル防衛」という嘘
会場の横断幕に「NO!PAC3」のものがありますが、日本や韓国にはPAC3ミサイルが配備され、サードミサイルの配備も計画されています。ミサイル防衛(MD)は「防衛にかかわるもの」と説明していますが、それは嘘です。MDの仕組みは防衛ではなく、アメリカによる先制攻撃の一部です。それは先制攻撃という剣への反撃を止めるための盾です。盾は剣が使われないと作動しないものです。
昨日、横須賀でイージスシステムの駆逐艦をみましたが、アメリカは各地にPAC3、サード、イージスシステムなどのMD配備をすすめています。たとえばポーランドとチェコでもMDシステムの配備をすすめています。また、イギリス、オーストラリア、グリーンランド・ノルウェーなどでも、全方位全領域での支配のためのレーダーシステムを拡張しています。MDシステムはイランからの攻撃を防衛するものといっていますが、実際にはロシアからの攻撃から守るものになります。
日本や韓国では北朝鮮の脅威が宣伝され配備がすすんでいますが、中国を包囲するための政策です。アメリカの産業界が発行する「スペースニュース」という新聞ではパトリックオラーリ将軍がイランと北朝鮮は2002年に予想よりも10から20倍のペースで立ち遅れていると指摘しています。とするならば、脅威はたいしたものではありません。
ではなぜMDの配備がすすめられているのでしょうか。脅威論はウソであり、MDは中国を包囲するためのものです。昨年、国防長官ロバートゲイツは、駆逐艦へのイージスシステム配備は中国に対する作戦に役立つものと言っています。アメリカはこの間、戦争をコンピューターでシミュレーションしてきました。このゲームではアメリカが中国に宇宙空間に飛ばした飛行機で核施設などを先制攻撃します。しかし、すべての核を破壊することはできませんから、MDが必要になるわけです。MDは先制攻撃で残った核を迎え撃つためのものというわけです。
アメリカや日本・韓国は北のロケット開発を利用し、MDを配備してきました。大量破壊兵器は悪いものと宣伝しています、なによりもアメリカが大量破壊兵器を所有しています。2009年6月29日にはバーデンブルグ基地で大陸弾道ミサイルを発射して6000キロ離れたクエゼリン環礁に撃ち込みました。さらに8月23日にも発射して同じ環礁に打ち込む予定です。アメリカの弾道弾の発射は許し北朝鮮のものは許さない、自分はやってもいいが他国がやることは認めない。これは偽善です。
2008年のアメリカの国防費は6070億ドルであり、世界の軍事費の42パーセントです。中国は850億ドル、ロシアは590億ドル、日本は460億ドルです。アメリカの同盟国が多額の軍事費を使っています。同盟国はアメリカの帝国主義的な軍事拡張主義に追随しています。日本には戦争放棄を謳う憲法9条があるのにもかかわらず、先制攻撃を行いえる国になろうとしています。
地球全体で化石燃料は減少していますが、中国はマラッカ海峡経由で石油を輸入しています。アメリカこのルートを抑えて中国の首を絞めようとしています。アフガンも交通の十字路として重要視され、ロシアの天然ガスやカスピ海の石油支配のためのルートになっています。「テロとの戦い」という言葉に騙されてはいけません。このような動きのなかで、中国は2007年に人工衛星を地上からのミサイルで爆破するという対抗実験をおこない、宇宙に破片をまき散らしました。
●軍産複合体の変革とMDの廃棄を
宇宙支配とMDの軍拡が宇宙戦争を起こしかねない緊迫した状況を生んでいます。戦争が起きれば多くの死者が生まれ、社会資本が破壊され、莫大なコストとなります。いま現在、地球の気候変動など地球は危機的な状況にあります。税金は宇宙の軍拡ではなく気候変動に対応するように使われるべきでしょう。
宇宙軍拡をグリーン産業にかえるべきです。軍産複合体の変革なくして核兵器は廃絶できません。
アメリカは軍需産業中毒状況です。アメリカの兵器輸出は第1の産業です。市民が平和を獲得したいなら、この軍産複合体を変えなければなりません。核廃絶は軍産複合体の変革なしではありえないのです。またMDの廃棄なくして核廃絶はありえません。ロシア・中国への先制攻撃を想定したMDをなくさなければ、核廃絶にむけての交渉は成り立たちません。
来年2010年のNPT(核拡散防止条約)改定会議への行動も重要ですが、この核廃絶の運動にMD廃棄と軍産複合体の変革の運動をリンクさせることがたいせつです。この核廃絶・MD廃棄・軍産複合体の変革の3つの運動をつなげてすすめていきましょう。
(名古屋講演と質疑から要約、文責・人権平和浜松)